Chain-of-Thoughtって何?
どう活用するのか知りたい!
この記事を読むことで、上記のような疑問が解決します。
「Chain-of-Thought Prompting」(思考の連鎖)は生成AI言語モデル(ChatGPTなど)の出力結果を改善する手法です。
こんにちは、シントビ管理人のアキラです。
今回紹介するChain-of-Thought promptingを学ぶことで、ChatGPTなどの生成AI言語モデルをさらに有効活用できるでしょう。
今回も文系目線でわかりやすく解説していきます。
それではChain-of-Thought Promptingについて、一緒に学んでいきましょう。
※この記事ではイメージしやすくするために、「生成AI言語モデル」を代表ツールの「ChatGPT」と表記します。他の生成AI言語モデルでも活用できる手法です。
Chain-of-Thought Promptingとは?通常のプロンプトとの違い
「Chain-of-Thought Prompting」(以下CoT)とは、
ChatGPTに与えるプロンプトに中間推論のステップを加えることで、複雑なタスクを解けるようにするためのプロンプト設計手法のことです。
単純に質問や命令をするような通常のプロンプト(Zero-Shotプロンプト)との違いを解説します。
1. 思考プロセスを分割する
通常のプロンプトはChatGPTに直接答えを出させますが、複雑な問題において、ChatGPTは誤った回答をしてしまうことがあります。
CoTでは答えを出す前に、複数のステップに分け、段階的に問題を解くように指示をします。これにより、ChatGPTが途中で誤りを犯す可能性が減り、より正確な答えを導き出すことが可能です。
2. 中間推論を重視する
通常のプロンプトでは答えのみを求めますが、CoTではその答えに至るまでの推論も重視します。
CoTに基づいたプロンプトを与えることで、ChatGPTは論理的に考え、複雑な問題に対しても理解を深め、正確な回答をすることができるのです。
3. 複雑なタスクに強い
通常のプロンプトは単純なタスクには適していますが、複雑な計算や推論が必要なタスクには限界があります。CoTでは、ステップごとに考えさせるため、複雑な問題や多段階の処理が必要な場合でも正確な答えを出すことが可能です。
CoTは、特に論理的思考や推論が重要なタスクにおいて効果を発揮します。
このCoTを扱う際にセットで登場するプロンプトの考え方が「Zero-Shot / Few-Shotプロンプト」です。簡単に説明すると、Zero-Shotプロンプトはヒントなしのプロンプト、Few-Shotプロンプトはヒントありのプロンプトです。
Zero-Shot / Few-Shotプロンプトについて詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
Chain-of-Thought Promptingの実例解説
通常のプロンプト(Zero-Shotプロンプト)では解決できない問題を、CoTを交えたFew-Shotプロンプトで解決してみましょう。
今回は書籍「大規模言語モデルを使いこなすためのプロンプトエンジニアリングの教科書」に掲載されているプロンプトが、非常に優れた例なため、拝借したいと思います。
ズワイガニ、タラバガニ、イカの足の数に基づいて計算を行います。ズワイガニ、タラバガニ、イカの足の数を計算して合計を求めます。
- ズワイガニの足は1匹あたり10本です。ズワイガニが5匹いるので、ズワイガニの足は 10×5=50本です。
- タラバガニの足も1匹あたり10本です。タラバガニが2匹いるので、タラバガニの足は 10×2=20本です。
- イカの足は1匹あたり10本(足8本、触腕2本)です。イカが3匹いるので、イカの足は 10×3=30本です。
これらを合計すると、足の総数は:50(ズワイガニの足)+20(タラバガニの足)+30(イカの足)=10050 (ズワイガニの足) + 20 (タラバガニの足) + 30 (イカの足) = 100
したがって、足の合計は100本です。
タラバガニは、カニではなくヤドカリの仲間のため、足の数は8本です。そのため、ChatGPTの解答は誤りです。
今回ChatGPT4を使用していますが、ご覧の通り、CoTに基づいた解答をしようとしているのがわかります。(ただし解答は誤っています)
では、CoTを用いて、正しい解答を導けるようにヒントを与えましょう。各生物の足の数が分かるように、プロセス付きの計算例をヒントとして与えます。
こちらの例も書籍「大規模言語モデルを使いこなすためのプロンプトエンジニアリングの教科書」に掲載されているプロンプトを引用させていただきます。
ズワイガニが2匹、タラバガニが1匹、イカが2匹います。足の合計数は何本ですか?
ズワイガニ(10本✕2匹)、タラバガニ(8本✕1匹)、イカ(10本✕2匹)で、20+8+20=48、合計48本です。
ズワイガニが5匹、タラバガニが2匹、イカが3匹います。足の合計数は何本ですか?
ズワイガニ、タラバガニ、イカの足の数に基づいて計算を行います。
- ズワイガニは1匹あたり10本の足があります。5匹いるので、10×5=50本です。
- タラバガニは1匹あたり8本の足があります。2匹いるので、8×2=16 本です。
- イカは1匹あたり10本の足があります。3匹いるので、10×3=30本です。
これらを合計すると、 50+16+30=96ですので、合計96本の足があります。
正しい解答を導き出すことができました。
このようにCoTを活用することでChatGPTなどの生成AIモデルの精度を高めることが可能です。
ちなみにFew-Shotプロンプトとの違いは?と気になった方も多いでしょう。Few-ShotプロンプトはChatGPTに期待する出力の関連例やヒント(類似の問題の解答など)をいくつか提供することに重点を置いています。
CoTは、出力につながる推論ステップを明示的に示すことに重点を置いており、Few-Shotプロンプトよりも一歩進んでいます。
Chain-of-Thoughtを誘発するプロンプト
CoTを活用するために、思考ステップの例をプロンプトで入力するのは骨が折れます。そこでChatGPTに対し、手軽にCoTを誘発するプロンプトを紹介します。ChatGPTへの指示の最後に、適切なプロンプトを入れることで、CoTを誘発することが可能です。
- ステップバイステップバイで考えてください。
- 多角的な視点で考えてください。
- デザイン思考で考えてください。
- 答えに至るまでの、中間推論ステップを明らかにしてください。
- 答えをいきなり出すのではなく、一つずつ箇条書きで考えてください。
など
書籍「大規模言語モデルを使いこなすためのプロンプトエンジニアリングの教科書」には、多数のプロンプト例が掲載されているため、詳しく知りたい方はこちらの書籍を手にとってみてください。
Chain-of-Thought Promptingの実践活用例
先ほどCoTと通常プロンプトの違いについて解説しました。ただし、ChatGPTに計算問題を出して、正しく計算できるように調整するということは、研究者ではない多くの方にとってはあまり意味がないことでしょう。
そこでCoTを実践で活用する例を紹介します。今回はお菓子のマーケティング立案を題材にします。
まずは通常のプロンプトです。
20代OLを対象にした、低カロリーグミのマーケティング企画をしています。
このお菓子のマーケティング戦略を考えてください。
20代のOLをターゲットにした低カロリーグミのマーケティング戦略を立てるには、彼女たちのライフスタイルや好み、健康への意識を考慮することが重要です。以下にいくつかの戦略を提案します:
- インフルエンサーマーケティング:
- 人気のファッションやビューティーインフルエンサーを活用し、SNSでのプロダクトプレイスメントやレビューを行う。
- YouTubeやInstagramのストーリーズ、TikTokでの短いレビュービデオを展開し、製品の魅力を訴える。
- 健康と美容に焦点を当てたブランディング:
- 低カロリーであることだけでなく、美肌やデトックス効果など、美容に良い成分を含むことを強調。
- パッケージデザインには清潔感と女性らしさを表現し、オフィスでの小休憩や携帯に便利なパッケージングを提案。
- サンプリングキャンペーン:
- 主要なオフィス街での無料サンプリングや、大手企業とのコラボレーションでオフィスビル内での試食会を実施。
- 健康志向のフィットネスクラブやヨガスタジオでのサンプル配布も効果的。
- 限定フレーバーやコラボレーション商品の展開:
- 期間限定の特別フレーバーを季節ごとにリリースし、継続的な関心を促す。
- 人気のカフェチェーンやレストランとコラボレーションし、限定メニューの一部として提供。
- デジタルキャンペーンと顧客エンゲージメント:
- 公式SNSで定期的なコンテストやクイズを実施し、フォロワーとのインタラクションを図る。
- ユーザーからの写真やビデオをシェアすることでコミュニティ感を醸成し、ブランドへの忠誠心を高める。
- 健康意識の高い食生活との連動:
- 健康とダイエットに役立つ情報を発信するブログやニュースレターを提供し、製品をそのライフスタイルにしっかりと組み込む。
これらの戦略を組み合わせることで、ターゲット層の興味と関心を引きつけ、製品の購買につながる可能性を高めることができます。
これだけでも十分な考察は得られていますね。ただし、少し表面的なマーケティング案であることは否めません。
次にCoTを用いたプロンプトを与えます。今回使用するCoTを誘発するプロンプトは「多角的な視点で考えてください。」です。
20代OLを対象にした、低カロリーグミのマーケティング企画をしています。
このお菓子のマーケティング戦略を考えてください。
多角的な視点で考えてください。
20代のOLを対象にした低カロリーグミのマーケティング戦略を多角的に考える場合、以下のようなポイントが考慮されると良いでしょう:
1. ターゲット市場の理解
- ライフスタイルの理解: 20代OLがどのような日常を送っているかを理解し、彼女たちがどんな時にお菓子を食べるか、どんな悩み(カロリー、健康、美容など)を持っているかを把握します。
- 消費動向の調査: トレンドに敏感で、SNSを活用する傾向にあるこの層が、どのような商品情報に反応するか調べます。
2. 商品の差別化
- ユニークな価値提案: 低カロリーである点を前面に出すとともに、美容や健康に良い成分(ビタミン配合、コラーゲン配合など)を加えることで、他の商品との差別化を図ります。
- パッケージデザイン: 若い女性が手に取りやすいおしゃれで洗練されたデザインを採用します。
3. プロモーション戦略
- インフルエンサーマーケティング: 人気のある女性インフルエンサーを起用し、InstagramやTwitterなどのSNSでの露出を増やします。
- コンテンツマーケティング: ヘルシーライフスタイルを提案するブログや記事を配信し、商品のイメージを高めます。
- サンプリングプロモーション: オフィス街での無料配布や、女性向けのイベントでのサンプル配布を行い、直接的な商品体験を促進します。
4. 販売戦略
- オンラインとオフラインの統合: ECサイトでの簡単購入オプションを提供するとともに、コンビニやスーパーなど、通勤路にある店舗での取り扱いを増やします。
- サブスクリプションモデル: 定期購入で割引が適用されるサブスクリプションサービスを提供し、継続的な購入を促進します。
5. フィードバックと改善
- 顧客フィードバックの収集: オンラインサーベイやSNSでのリアルタイムフィードバックを活用し、商品改善につなげます。
- 市場動向の定期的な分析: 市場動向と消費者のニーズの変化に敏感に対応し、商品やマーケティング戦略を定期的にアップデートします。
これらの戦略を複合的に実施することで、ターゲット市場に効果的にアプローチし、成功を目指すことができます。
ChatGPTの戦略立案の内容に多角的な視点が加わったことがわかります。実際のマーケティング企画立案の場合には、より詳細な情報を与えることで、ChatGPTから深い洞察が得られることでしょう。
もう一つの見逃してはいけないCoTの利点は、ChatGPTが出した結論に至った背景やプロセスを私たち人間側が認識できることです。特にマーケティング初心者や新たな視点がほしいと考えている実務者にとっては、このような多角的な視点を得られることには大きな価値があるのではないでしょうか。
Chain-of-Thoughtを活用して、ChatGPTの力を引き出そう!
この記事では、プロンプトエンジニアリングの手法、Chain-of-Thought(思考の連鎖)について解説しました。
「Chain-of-Thoughtを誘発するプロンプト」の章で紹介したように、簡単なプロンプトでChatGPTの推論能力や計算能力を高めることも可能です。ChatGPTを使いこなして、最大限の力を引き出すために、一緒に勉強していきましょう。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました!!